朝仕込みの生ジェラート専門店。ここにしかない味を楽しんで
能勢倶楽部ジェラート工房道の駅能勢から目と鼻の先、国道173号線から川沿いの側道を降りた場所にある、鮮やかな青い壁が里山の風景に映える建物。こちらが、2021年にオープンした能勢唯一のジェラート店、「能勢倶楽部ジェラート工房」です。
2023年からイートインを開始し、外の景色を眺めながら出来立てのジェラートを味わえるこちらのお店。春を迎えると、ツーリング客やわんちゃん連れの人をはじめ、能勢の自然に癒しを求める人たちで賑わうのだとか。
旬の素材を使った手作りの「農家ジェラート」を提供しているという、能勢倶楽部ジェラート工房は、どのような想いでオープンされたのでしょうか?代表の車 健司さんにお話を伺いました。
きっかけは食品ロスへの意識から。自分らしさを詰め込んだこだわりの店作り
過去にコンビニエンスストアのフランチャイズ店の責任者をしていた経験があるという車さん。当時の経験に、お店作りの原点がありました。
──能勢倶楽部ジェラート工房をオープンしたきっかけを教えてください
コンビニで働いていた時、あまりの食品ロスの多さに、愕然としました。本部からは、「品揃えが充実しているように見えるよう、一定量の廃棄は必要」と、販売見込みを超える陳列を指導され、このような社会の状況をなんとかできないかと強く思いました。このことがきっかけで、食品ロスを限りなく減らしたいと、資源の循環に関心を持つようになったのです。
次第に、自分でも農業をしながら、他の農家の食品ロス予備軍の農産物の引き受け手となり、新たな価値を生み出す仕組みづくりを検討するようになりました。そこで着目したのが、ジェラートだったのです。
──ジェラートの利点は、どのようなところにあるのでしょうか?
ジェラートはイタリア語で「凍ったお菓子」という意味です。牛乳や生クリームなどの乳製品に、様々な素材を加えて作ります。ジェラートは、流通に回らない不揃いの農産物などを活用することができ、かつ冷凍することで長期間保存ができるという利点があります。フレーバーの可能性は無限大で、どんな素材でもジェラートにできると思っています。当店では、珍しい野菜や果物を使ったジェラートも人気です。私自身、珍しい野菜を栽培するのが好きで、お客さんをびっくりさせたい、楽しんでもらいたいという想いで、日々新しいフレーバー作りにチャレンジしています。
店頭には、常時6種類のフレーバーが並ぶ イートイン用のダブルフレーバー
安心・安全な地元の旬の味を、ジェラートで
──こちらのお店のジェラートの特徴を教えてください
当店のジェラートには、農薬を使用せずに栽培した四季折々の旬の食材を使用しています。完熟状態のものを収穫し、素材本来の味を引き出すようにして作ることにこだわっています。仕入れは、自家栽培の野菜・果物のほか、能勢の生産者や全国各地の自然派の生産者から。旬の熟した果物や規格外の野菜などを農家さんから譲り受け、生産者との“顔の見える関係”を大切にすることを心がけています。
作り方でこだわっている点は、ピューレは使わず、素材から使用すること。一つひとつ皮を剥いて、手作業で丁寧に下処理をしています。当日朝に仕込み、店頭では出来立ての生ジェラートを楽しんでいただけます。ショーケースには常時6種並べていて、売り切れたら新しいフレーバーをお出ししています。
イタリアではジェラート専門店「ジェラテリア」が身近な存在ですが、日本ではまだまだ普及していません。日本でもまちに1軒、そこにしかない旬の素材を使った手作りジェラートを出すジェラート屋があれば、店ごとに色々なフレーバーがあって楽しくなりそうですね。
──ジェラート専門店は、日本ではまだまだ希少な存在なのですね。そんなお店が能勢にあるのは嬉しいです!これから迎える春夏のおすすめフレーバーは何ですか?
ビーツやよもぎ、山椒、キウイヨーグルトなどが出ます。特にビーツは栄養価が高く、色も鮮やかで美しいので、女性に人気ですよ。
暖かくなる3月ごろからお客様が増え、4月以降はハイシーズンになります。女性グループ、若いカップル、お一人の方、ファミリー、老夫婦など、幅広い層のお客様が来店してくださっています。テラス席ではわんちゃんとの同伴が可能なので、愛犬連れの方も来られます。サイクリングの方向けに、サイクルラックも用意していますよ。
心地よい風が吹き抜ける、開放的なオープンテラス。四季折々の里山の風景を楽しみながらジェラートを楽しめる
手みやげに最適!旬の味をご家庭でも
──イートインだけではなく、持ち帰り用のジェラートもあるのですね
店頭では、蓋付きカップのジェラートをお持ち帰りいただけます。店頭で楽しんでいただいたジェラートを、ご家族やご友人への手みやげにされる方もいらっしゃいます。安心・安全な素材でできているので、贈る人を選ばないというところもおすすめポイントですね。
また、お客様からのリクエストもあり、通信販売も始めました。なかなか能勢まで買いに来られないという方でも、ご自宅で気軽に旬の味を楽しんでいただけます。年末年始のご家族での集まりなどでも喜ばれています。
持ち帰り用のジェラートは、たくさんの種類のフレーバーが用意されている
筆者はビーツのジェラートを試食させていただきました。見た目は鮮やかな紅色で、食べる前からワクワク感!これまでに食べたお客様では「ほうれん草のような味」とおっしゃった方がいらっしゃったそうですが、私はなんだか芋や栗のようなホクホク感を感じるように思いました。ミルクのやさしい甘みとほのかなビーツの香りが合わさってとても美味しく、体にやさしいものを食べられている満足感もありました。
川沿いの立地のこちらのお店では、初夏になると蛍が鑑賞でき、6月には期間限定で夜営業も行うそう。いつ行っても新しいフレーバーに出会うことができるため、季節が変わるたび
に訪れたくなるお店だなと感じました。あなたのお気に入りのフレーバーも、きっと見つかること間違いなしです。
取材日:2025/1/24
文・写真/西楽 結
写真提供/里山ファーム合同会社